「卒業しても遊びに来るよ!」「将来有名になったら,絶対ここのことを話すよ」
子どもたちが折々に私に言ってくれる言葉です。「不登校」自立支援「うりはみクラブ」はお陰様で、昨年四月の開校から一年を迎えます。多くの方々の協力を得て、試行錯誤ながら、子どもたちと向き合ってきた甲斐があったと大変嬉しく思います。 現在在籍する四名(中学三年生女子一名,中学二年生女子二名,小学六年生男子一名)は、皆それぞれに学校に行きたくても行けない要因を抱え、二年近く不登校だった子もいます。そんな子どもたちが「うりはみクラブ」には毎日登校して来るようになり、教室にはいつも子供たちの活気あふれる声が響いています。
開校から振り返って
私はこれまで、「不登校」の子どもと接したことがなく、「物静かで傷つきやすい、扱い辛い子」というイメージを持っていました。そんな子どもたちの心を解きほぐし、「学校に行きたい」気持ちを取り戻す手助けができるのか、開校を前にしだいに不安が募りました。そんな頃に私が詠んだ和歌を紹介します。
いかにして接すべきやと自問する一日(ひとひ)終はれば疲れ押し寄す
どう接し、どう対応すべきか。最初の一週間は自問自答の連続で、こんな毎日がずっと続くのかと思うと、音を上げそうでしたが、私がそうである以上に子どもたちの緊張はなおさらのことだったでしょう。心を開いてくれるように、こちらから積極的に話しかけ、その子のよい所を見つけたら、その時々に誉めるよう努めました
こうしているうちに、笑顔を見せたり、自分から話しかけててくれる機会が増えました。
「それ、いいね」と声をかくれば笑みこぼしやさしくよき顔見する子らはも
よきところ見つくるたびに褒めてあげ子らの笑顔をいや増し行かむ
一月程経つと、「先生といると元気になるよ」「うりはみにきてよかった」と言ってくれるようになりました。
休みや遅刻・早退なども次第に減っていき、「うりはみクラブ」が子どもたちにとって「過ごしやすい場」「心許せる場」になりつつあることが実感でき、私自身充実感を覚えるようになりました。
子どもたちは、自分の意見・考えをきちんと持っており、不登校に至った経緯などを自分なりに分析することもあります。このままではいけないことも分かっており、現状打破のため、しっかり努力できる子もいるのです。
子ども同士の関係もしだいに深まってきました。
一方では、朝から苛立っていたり、急に暗い表情になったり、ポロポロ涙を流し始めたり、「帰る」と言ってきかなくなったりと、その情緒不安定さやわがままに悩まされることもしばしばです。励ましたり、叱ってみたりしながら向き合っていますが、なかなかうまくいきません。すると、いつしか、子どもたち同士お互いに「どうしたの?」「たまにはそんな日もあるさ」と優しく言葉をかけ合うようになっていました。お互いに気遣い、励まし合う関係がいつの間にか出来上がっていました。
お互ひにやさしさ持ち寄り睦まじく付き合ふ姿の微笑ましかり
しかし、全てが順調に進んでいるわけではありません。人間関係のつまずきがきっかけで不登校になった子ばかりです。職員、外部講師、お客様などとの交流を楽しみにするようになってはきましたが、まだまだ人との関わりに対する煩わしさや恐れを口にします。
また、クラスの皆にうち解けきれず「孤独感」を感じる子も出てきました。いつしか顔をこわばらせて来ることが多くなり・・・遅刻が目立ち、休みが続くようになりました。「教室で常に孤独感を感じている。心のケアをお願いします。」と保護者は一方的に言ってきますが、本当は家庭の親子関係の不満も抱えていたのです。そのこが一人になっているときは、会話に入れるように声をかけたり、メールでのやりとりで「皆と仲良くなれる機会はたくさんあるからとにかく頑張って出ておいで」と励ましたりしましたが、力及ばず、その子は教室から去っていくことになりました。
うまく人間関係を築けない子への手助けは大きな課題です。子どもが自分自身で乗り越えていかねばならないことであり、また、問題の根本は家庭にあることが保護者との関わりの中で明確に見えてきました。しかし、その解決には時間を要します。「子ども同士が言葉を交わし、親しくなれる機会」をもっと積極的に作りだす、これが今の私にできることだと気がつきました。
日常活動と自然体験活動
「うりはみクラブ」は、教室での「日常活動」と野外での「自然体験活動」を中心に取り組んでいます。
日常は、朝九時に登校し、午前中は各自のペースで学習します。午後は、華道・書道・茶道、美術に英語、偉人伝など、寺子屋モデル講師、外部からの専門講師にもご協力頂き様々な活動を行っています。多様な経験をする中で、自分の好きなことや楽しみを見つけさせることがねらいです。お花で自分を表現すること、書道の楽しさ、抹茶の美味しさなどに子どもたちは次第に目覚めています。
「自然体験活動」では、動物園見学、船釣り、油山登山、ソーメン流し、キャンプなどを行いました。
食事は自分たちの手で作ります。今年二月のキャンプでは、野外炊飯でカレーライスを作りました。火起しから調理まで全て自分たちで行います。包丁での野菜の皮むきが初めての子もおり、危なっかしい手つきには思わず冷や冷やさせられました。しかし、悪戦苦闘しながら出来上がったカレーを頬張った時の子どもたちの喜びようは忘れられません。口々に「美味しい」と言い、あっと言う間に平らげたのです。鍋の煤落としも、冷たい水で手をかじませながらぴかぴかに磨きあげました。この経験を通し、一人ひとりが力を出し合って一つのものを作り出す喜びや、最後までやり遂げたという「自信」を、身につけたに違いありません。
初めての学校復帰
この三月で二人(中三、小六)が学校に復帰します。
中三の子は、自ら志望する高校を受験し、見事合格しました。四月から普通高校に通います。始めは通信制高校を考えていましたが、「制服を着て、毎日学校に通う」ことを自分の意志で選んだのです。
小六の子は、知り合いの多い地元の中学校に進学します。友達からの視線が気になるようですが、父親とよく話をして決めたということです。
入学が近づいている今、二人とも期待と不安が募っています。「嫌だな」と消極的なことも言いますが、これは自分で決めたことにきちんと向き合おうとしている証拠だと思っています。不安に負けそうな自分に打ち勝ち、春から新たなスタートができるよう祈るばかりです。
さいごに
夏休み前、一人の子(中三)が教室にある一冊の書籍を欲しいと言い出しました。『親子で読む「言志四禄」おじいちゃんとぼくー佐藤一斎さんからの伝言』。(NPO法人いわむら一斎塾発行)です。
そこで,本の中から好きな言葉を選び,その感想を書くという課題を与えました。
以下,その子の文章です。
「『無くしてみて初めて、その大事さに気がつく』
私が好きな言葉はこれです。私はまだそんなに人や物を失ったことはありませんが、これは大事なことだと思います。
今、お父さんや、おばちゃん、お母さんが生きていることに毎日感謝して生きたいと思います
(中略)
私は、一生の中でいろいろなことを学び、経験したいと思います。たくさんの人に支えられて、私は生きているのだと実感しました。後悔する前にいつもいつも感謝するのが大事です。こうして「徳」を積み、魂を磨いていきます。
今はこれから一人で生きられるように、たくさんのことを学んでいる最中だと思います。
自分には何ができるかをよく考えて、これからも一生懸命がんばっていきたいです。」
・・・決して怠け心や好んで「不登校」になったのではありません。学校に行けなくなったことで少し「自信」を無くし、人との関わりに怖れを抱くようになっただけです。「これからも一生懸命頑張っていきたい」、この言葉から「前を向いて歩もう」としている気持ちが伝わってきます。これは、この子だけではなく他の子にも言えるのです。
「うりはみクラブ」に集う子どもたちが、新たな出発に挑んでいこうという「勇気」と「自信」を持って巣立っていけるように、もっと努力奮闘すること、二年目を迎える今心新たに決意します。


